【劇】 チンチンブラソーブラソーセージ (ザ・プレイボーイズ)
この劇団。
「男だけしかいない場所では、男はすぐ悪ふざけをし、下ネタを喋り、急に野球なんかを始めます。
それは、たとえたった一人でも女の人が混ざってしまったら、もろくも崩れ去ってしまう世界です。
「男ってバカだな」。舞台上をハイテンションで所狭しとはしゃぎまわる役者を見て、そう思っていただきたいのです。」(劇団WEBサイトより。改行位置変更)
おお、この開き直りがすがすがしい。で、今回の公演。
「2005年の春に旗を揚げてから、丸10年。2015年の春の本公演を持ちまして、ザ・プレイボーイズは、解散します。
劇団員なんていないくせになにが解散だよとか、4年くらい劇場でやってなかったくせに10周年でいいのかとか、そもそもザ・プレイボーイズなんて名前すら知らねぇのに最終公演とか言われてもとか、ツッコミどころはありすぎるかと思いますが、まぁ、最後です。
で、せっかく最後なので、なんだかんだこれまで僕を苦しめてきた「演劇」というやつに対して、逆にツッコミまくってやろうと思います。
演劇で今や当たり前になっているおかしなとこ、どうかと思うことを、パンパンに詰め込んで、思い切り振り回して、笑い飛ばしてやるのです。
そうしたら、演劇もちょっとはこっち見てくれないだろうかなんて、思うのです。」(劇団WEBサイトより。改行位置変更)
10年で4年ぶりの第8回公演。それが解散公演ですか。まあ、ケジメをつけるだけでもマシと言うべきか。
公演タイトルも、人前で言い難い、男の子のはやし言葉「チンチンブラブラソーセージ」をもじった物。あそうか、「男はすぐ悪ふざけをし、下ネタを喋り・・・」ってそこか。
とんでもない劇団なんだろうか。ショボイんだろうな・・・と、アウェイ感漂う北上野の小屋にトボトボと行ったわけですわ。
開演15分前だというのに客席は5割も埋まってない。ああ、可哀想に。これだから解散なんだな・・・。
チラシに目を落としていると、開演5分くらい前に前説が始まる。主宰者さんらしい。これが思いのほかイケメンで、しかも真面目な演劇青年。ふと気づくと客席もほぼ満席。あれ、予想と違うぞ。
開演時間。先ほどの主宰者さんが再度登場。前説を始める。と、そこに一発の銃声。崩れ落ちる主宰者。お腹には血が・・・。
舞台の袖、裏から、心配した役者さんが顔を出す。「バカヤロウ、開演前に役者が顔を出すんじゃねぇ。」と、苦しい息の中、なおも前説を続けようとする。救急車、病院へ・・・という中、本来「制作」の仕事である前説を何故自分がやるのかを熱く語り、見事な階段落ち、そして息絶える。
遺された役者たちは、彼の遺志を継ぐべく、涙ながらに前説を続ける・・・・。既にこれが「最高の前説」というネタだった訳ですわ。
アフタートークで主宰者が語ったところによれば、6人の役者(+主宰者)が、それぞれ「演劇」をテーマに、やりたい題材を持ち寄ったそうで、それを10~15分ほどの芝居・コント・映像に仕立ててある。それぞれの話と話のつなぎは6人の役者がワークショップ風に「〇〇がやりたい」「誰がやる?」「んじゃ、お前・・・」ってな感じで、自然につながっていて、どこまでがアドリブで、どこまでが台本か判らないところが味噌。
それぞれの題材は、前説のほか、「芝居のお約束」「高校演劇」「客いじり」「養生テープ」「殺陣」それと、よく判らないんだけど「人狼ゲーム」。
〇「図れメロス」(芝居のお約束)・・・刑場に戻ってきたメロスとセリヌンティウスは互になぐり合う。セリはグーで殴った(ふり+効果音)が、メロスはパーでホントに殴る。パーよりグーの方が痛いはずなのに、なぜか納得がいかないセリ。
〇「丸川女子高演劇部」・・・高校の演劇部ってどんな感じ?から始まって、地区大会目指して頑張る演劇部の様子を描く。きっと、あんな感じなんだろうな。地区大会で敗退して、引退する3年生が2年生にひと言ずつ言葉を残す。これ、2年生役が「絶対に笑ってはいけない」状態なので、3年生役は言いたい放題。ここは多分全部アドリブ。
〇 選ばれし屍人の会(タイトル不明)・・・人狼ゲームで、いつも何となく最初に処刑されちゃう人たちの秘密結社。こいつだけは、ちょっと演劇に結びつかなかった・・・。
〇客いじり(タイトル不明)・・・芝居小屋に生息する、謎の生物「キャクイジリ」の生態を、冷静に解説するEテレ風のやりとり。キャクイジリ役の役者さんは、実際に客いじりをするのだが、私の見た会はあえなく返り討ちに遭ってた。
〇「養生テープマン参上」・・・芝居小屋でガムテープを使うと、塗料がはがれるなど様々なトラブル。そこを解決するのが緑の養生テープ。簡単にはがれるのに驚異の粘着力、けがをしたらばんそうこう代わり、ペンキ塗りにはマスキングにも使える。
〇「裏切り幕末アクション」・・・御用改めで宿や乗り込んだ新撰組。ところが身内に裏切り者が。そして、その裏切り者がさらに浪人に裏切られ、浪人は宿の主人の裏切られ、主人は黒子に裏切られ、黒子は宇宙人に裏切られ、宇宙人は出身星に裏切られ。その度に、情けない階段落ち。
いやぁ、これだけてんこ盛りなのに、ドタバタ感が全くないんですわ。どの役者さんも、達者です。
前説の後の「図れメロス」なぞ、せりふそのものの迫力は、それだけで舞台にしてもいいくらい。
もう90分があっという間でした。
実は、この中で一番わかりにくかった選ばれし屍人の会のネタが、いちばんメッセージ性が強かった気がする。
いつも「何となく」最初に処刑されちゃう。これもひとつの才能、と位置づけ、彼らを日本中に派遣すれば、争いごとはなくなり、ひいては世界平和に結びつく(笑) そして、彼ら自身にとっても「何となく」死んじゃうんじゃなくて「使命として」死ぬことによって、そこには満足感が得られる。
これって、気の持ち様で人生、いくらでも変えられる・・・という素晴らしい教えなんじゃないかと。
アフタートークで、その辺を聴きたかった(演劇とどう結びつくのか)んだけど、質問コーナーになったら常連さんらしき女性がサッと手を挙げて「善雄はガールフレンドはいるんですか?」。あ、ここで、あんまり真面目なことを訊いちゃいけないんだ、と空気を読んで諦めたおいら。
これで解散なんてもったい、とは思ったけど、役者さんたちはそれぞれ、別の劇団に所属してたり、フリーでやっていたり、ということなので、主宰者さんが声をかけたら、また集まってきそう。
アフタートークで、主宰者さんのお友達の別の劇団の主宰者さんがしきりに水を向けてましたが、半年後にまたやりたくなってる・・・に一票。
とにかく、気持ちよく笑った90分。2900円はお得でした。
観劇日:2015年3月18日(水)ソワレ
小 屋:上野・上野ストアハウス
木戸銭:2900円
(2015-8)
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